『当たり前』が嫌だった。

人生いろいろ、色々なところでよく聞く言葉だ。

確かにそうかもしれない。

人が違えば思考も変わってくる。

見方によってはそう言えなくもない。

しかし、また違う見方をすればどうだろう・・・?

確かに思考はそれぞれ違うだろう。それによって多少行動に違いは出てくるかもしれない。

しかし、やっていることに大差はあるのだろうか、いや、ない。

職業、生活環境、生活地域によって差はあるだろう。

しかし、自分と似たような人生を送っている人物は世界中探せば何万といるだろう。

世の中にはたまに人とはまったく異なった生き方をした人はいないこともない。

しかしそれは、ごく僅かで、一般人には手も届かないような世界で・・・。

 

 

 

午前0時の君へ(前編)

 

 

とある1件の平凡な住宅。そこに彼、佐藤雄二は住んでいた。

ふとペンを置き窓から外を見る。

窓は少し外との気温差で曇っていたが手でぬぐうと見慣れた風景が飛び込んできた。

時はもう11月24日。もうすぐ12月になろうというところだった。

窓から目を外して自分の机へと再度目をやる。するとそこには見慣れた参考書がやりかけの状態で置かれていた。

そう、俗に言う受験勉強というやつである。雄二も高校3年になっていた。

実を言うと進路を決めたのはそう前の話ではなく、彼はぎりぎりまで悩んでいた。

成績はかなり良い方なので無理を言わなければどこの大学でも入れたであろう。

担任も熱心に地元にある有名大学への進学を勧めていた。

苦心の結果決めた進路であったが、雄二は決して満足したわけではない。

普通ならば大学生活への夢を膨らませながら勉強に励む時期なのかもしれない。

しかし、どうしても雄二はそういう気分にはなれなかった。

「はぁ、どうしたもんかねぇ・・・」
ボソっとつぶやいてみるも反応をくれる人は誰もいない。

それもそうだろう、時刻はもう日付も変わる午前0時前だ。

ここは自分の部屋だし、そうでないとしても親はもう寝ている時間だった。

「外にでも散歩に行くか」

そう言うと、傍にかけてあった上着をすばやく取って親を起こさないように玄関へ行く。

そして、親にばれないようにそっと戸を閉めると家の正面にある公園へと足を運んだ。

 

 

 

 

平凡な日常、変わりゆく日々。

その中にうもれてゆく『その他大勢』の中の一人になってゆく自分。

それがたまらなく嫌だった。

そして、それが分かっていながら変われない自分がなによりも許せなかった・・・。

輝いていたかった。

どんな所にいても、どんな状況でも、光り輝いていたかった・・・。

しかし、現実はただ残酷で、気がつけば『その他大勢』の中にうもれている自分がいた。

生きる意味が見出せなかった・・・。

ありふれた人生を生きることは、死と同意義だと思っていた。

悔しかった。

悲しかった。

けど、死ぬことはできなかった。

そんな弱い自分にいつも腹を立てていた。

 

 

 

そんな思考を頭から振り払うように雄二は強く頭を振った。

いつものことだった。

いつも同じように考え、苦しみ、もがいてきた。

結局、答えが出たことはなかったのだが・・・。

こんなことを考え始めたのは、最近ではなかった。

 

 

雄二の両親は共働きだった。

仕事場は同じで上司、部下の関係だ。それは結婚する前も今も変わらないらしい。

そんな中で育ってきたものだから雄二は自然と一人でいることが多くなっていた。

そのことで親を恨んだためしはない。休日になるといつもどこかへ行っていたし、

一緒に遊んでくれた。

いつからだろう、そのことに疑問を抱くようになったのは・・・。

平凡な毎日、変わらない日々。

周りを見渡せば、自分と同じような友人はたくさんいた。

疑問を持つと、もう止まらなかった。

両親も両方平凡な会社員だった。

毎日同じような仕事をこなし、週末になると決まって笑いあっていた。

そんな両親に腹を立てた時期もあった。

なんでこんな繰り返す日々に満足しているのか、なんでそんなに毎日楽しそうにしていられるのか。

問いただした時もあった。しかし、そういう時は決まってやんわりとした口調で、

『その定義は人それぞれだ。そんな毎日に満足している人もいれば、雄二のように満足していない人もいるし、

その事に気がついていない人もいる。結局人それぞれなんだ、自分が答えを見つけるしかないんだよ』

決まって似たような答えが返ってきた。そして、いつしか誰にも聞かなくなっていた。

そして、ずっと自分の中で答えを探し続けてきた。

しかし、答えが出たためしはなかった。

進路がずっと決まらなかったのもそのせいだった。

ありふれた大学へ行くのは嫌だった。しかし、俺には他の選択肢はあるはずもなく、

結局大学へ進学することになった。

いくつか自分を納得させるための言い訳も考えた。しかし、どうしても納得できなかった。

そして、今日のようにどうしようもなくなる時もあった。

そういう時は決まってこの公園へ足を運んでいた。

そして、気分を落ち着けてから帰るのだ。

そして、今日もそうなるはずだった。

公園の中をぶらっとした後、いつもより遅い時間に出てきたので帰ろうとした。

しかし、その近くに人の気配を感じる。

ここは公園だ。人がいてもおかしくはないだろう。これが普通の時間なら。

しかし、今は午前0時だ。普通の人間が出歩くには少々時間が遅すぎる。

それは雄二にも言えることなのだが・・・。

ふと気になったので気配のする方へと足を運ぶ。いや、引き寄せられたと言っても過言ではない。

気がつくと噴水前へと来ていた。

 

 

そこには一人の少女が踊っていた。

 

噴水の前で月のスポットライトを浴びながら。

 

ただ一人悲しそうに、そして寂しそうに・・・。

 

それは、見るもの全てを魅了する。

 

悲しい、ただひたすら悲しいダンス・・・・。

 

 

 

いつまでそうしていたのだろう。

10分、いや、もっと長かったのかもしれない。

雄二はずっと少女に見とれていた。

気がつけばダンスは終わり、雄二は少女(と言っても見た感じは雄二と同い年)

声をかけようとした。しかし、かけられなかった。

こんな体験は初めてだった。

声をかけないといけない気がした。

「っ!?」

しかし、少女は声にもならない声をあげるとすぐその場から立ち去ってしまった。

 

今までのことは全て夢ではないのか、そう思って頬をつねってみた。

しかし、そこに確かな痛みがあった。

夢ではなかった・・・。

 

 

その日雄二は一人の少女と運命的な出会いをした。

それは、これから始まる甘く切ない恋物語の始まりでもあった・・・。

 

 

 

あとがき

今回は管理人も初挑戦となるオリジナルSSの前編をお送りしました。

これも以前ふと思いついたもので少し暖めていたものです。

二次創作もいいですがオリジナルもたまにはいいものですね。

まあ、長編の場合は1から全部考えないといけないので書く気はしませんが(

一応前編、ということにしてありますが前編、後編の2部構成になるのか前編、中編、後編の3部構成になるのかはまだ決まっておりません。

あくまでもナデシコとかの合間に書いたものですからいつ簡潔させるかも決めてませんし・・・。

オリジナル初挑戦ですからおかしいところもあるかもしれませんが気長に見守ってやってください。では言い訳も恥かしいのでこれにて・・・。

感想お待ちしております!!