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Kanon 名雪超短編 雪の少女







その日も町には雪が降り積もっていた。

地元の人間には慣れたものだろうが、そうでない人間にはかなりキツイだろう。

そんな状況の中、彼女、水瀬名雪は駅のすぐ傍にずっと立っていた。

理由は簡単、この冬から彼女の家で居候することになった1人の青年を迎えに来たのだ。

約束の時間は午後1時。今は、午後4時…。

既に3時間の遅刻だが、彼女はそのことに気がついてない。

駅のすぐ傍にあるベンチに座ってじっと彼女のことを待っている青年を、

少し離れた位置からずっと見ていた。

それは、彼の来るもう1時間前、今から4時間も前から…。

出て行きたかった。が、出て行けなかった。

まるで体が金縛りにあったかのように、その場から動けない。

いや、心の奥では彼に会うことを拒んでいるのかもしれない。

彼女を縛り付けるのは、幼い頃の記憶…。

ここに来るとどうしても思い出してしまう、あの日の記憶。

その上、今日はあの日と同じベンチに、あの日のように彼が座っている。

7年前のあの日、最悪のタイミングであんな行動に出てしまった自分。

あの日、何が起こったのかは理解していた。けど、止められなかった…。

払いのけられた雪うさぎ、拒絶の言葉を紡がれた自分…。

(結局はあの日のように拒絶されるのを怖がってるだけ、なんだよね…)

そんなことは当の昔に気づいていた。

だからこそ、どうにもできない矛盾。

自分自身の心だからこそ、偽れない…。

(はぁ、どうしよ…)

早くつれて帰らないといけない。母も待っている。

(祐一は、きっとあの日のこと覚えてないよね、覚えてるわけない…よね?)

結局はそう思い込むことしか出来なかった。

忘れているなら、無かったことにしてしまえ、と…。

しかし、思い出してほしい、そして、自分を受け入れてほしいと思う自分。

思い出されて、自分が傷つくのを怖がっている自分…。

けれど、止まってばかりはいられない。

(これ以上遅くなったら、お母さんの謎ジャム食べさせられちゃうよ…)

どうでも言いことを考え、心を落ち着かせる。

「ふぁいと、だよっ」

自分にそう言い聞かせ、一歩を踏み出した。

そして彼女はこう言うのだろう。

「雪、積もってるよ?」

と…。







あとがき



いやぁ、あとがき書くほどでもないくらいに短いです。

というか、逃げます。

次回作品で会いましょうっ

(._.;)))))......逃げ逃げ