第2話 向けられた刃
あれから何時間たったのだろう。
イツキから部屋の場所を教えてもらって部屋に入ってから荷物もほったらかしてベットにもぐりこんだ。
かなり寝た気がしたが、時計を見ると4.5時間しか経ってなかった。
今まで働いていたのが飲食店のため、朝の決まった時間になると自然と起きてしまう体質になっていた。「起きるか・・・」
今までの生活とは違い、まだ少し寝ていることもできたが、二度寝できそうもなかったので起きることにした。
ベットから出てあたりを確認する。そこにはまだ運び込まれた荷物がそのまま残っていた。
「今日は1日この部屋の掃除をすることになりそうだな」
すぐにでも部屋の掃除に移りたかったが、彼は起きたばかりだった。
朝の身支度を軽く整えると、適当に朝食を済ませ、そしてようやく荷物整理に移ろうとしていたそのとき、腕につけたコミュニケが不意に鳴り出す。「もしもし、こちらテンカワ」
「私ですが、テンカワさん起きてらしたんですか?」
コミュニケに通信を入れてきたのはプロスだった。
「はい、今起きたばかりですが。それより何かあったんですか?」
「今から重大発表をするので隣の部屋にいるはずのイツキさんを連れて至急ブリッジまで来てください。」
「了解。すぐに向かいます。」
すぐにブリッジへいけるようにはしてあったのですぐ向かうことにした。
「イツキ、いるか?」
「アキト? なにかあったの?」
部屋の前で呼んでみるとすぐにイツキは出てきた。格好は数時間前と同じだったので寝起きというわけではないらしい。
その様子からすると何も聞かされていないらしい。「プロスさんから召集がかかった。今からブリッジに行くぞ」
「そうなの? じゃあ行きましょう」
それからすぐにブリッジへ向かう。
アキトもイツキもいろいろ話したかったが召集に遅れるといけないので走ってブリッジへ向かった。
「テンカワ・アキト イツキ・カザマ ブリッジイン」
オモイカネがそう表示すると同時に2人が入ってきた。
そこにはもうブリッジ要員全員がそろっている。
「遅れてすいません」
「いえいえ、こちらこそ、いきなり呼び出したりして申し訳ありません。
それでは全員そろったところで始めましょうか。今回皆さんに集まってもらったのは目的地を発表するためです。」
「そういえば目的地聞いてなかったわね。なんでなの?」
ミナトがプロスに問いかけた。
「軍からの妨害を防ぐためでして・・・」
「我々の目的地は火星だ!!」
プロスの言葉をさえぎるようにしてゴートが言った。
未然に目的地を聞いていたアキト以外全員びっくりしている。
「地球を見捨てるというのですか!!」
黙っていたジュンがそう叫ぶ。一般企業が作った戦艦ながらも、軍のそれよりも数段上の性能を持つナデシコを、「では、軍が撤退した後火星に残された人々と資源はどうなったのでしょう?
ナデシコの目的はそれらを回収するために火星へ行くことです。」
ジュンが火星へ行くことを抗議しようとしたが、プロスはそれを言いくるめた
「ではナデシコ、火星へ向け発進・・・」
「残念だけど、そうはさせないわよ」
ユリカの声をさえぎるようにしてムネタケが言った。
その声がしてすぐにブリッジに銃を持った兵士が次々と入り込んできてブリッジクルー全員に銃口を向けた。
アキト1人ならば相手の体制が整う前に指揮官、この場合ムネタケを制圧することができたかもしれない。しかし、(俺一人ならなんとかなるが、今ここで動くとブリッジクルーに被害が及んでしまう・・・)
周囲を見渡しながらアキトはそんなことを考えていた。
「血迷ったかムネタケ!!」
今まで見守っていたフクベも、このムネタケの行動には黙っていられなかったらしい。「この船は軍が有効活用させてもらうわよ。それに、もうすぐお迎えがくるわ」
ムネタケがそういうと、まるでタイミングを見計らったかのように海中から軍のものと思われる戦艦が姿を現した。
それは、連合軍所有戦艦であるトビウメであった。「私は連合軍のミスマル・コウイチロウである!」
その船の艦長らしき人が通信をしてきた。
「ただちに武装解除しこちらの指示に従ってもらいたい」
「最近の軍はずいぶん強引になったんですね」
元軍人であるアキトが、すっと前に出た。忘れられがちではあるが、彼は元軍人であったのだ。「君はもしかするとアキト君か? 軍を辞めたのは知っていたが…。そんなところにいたのか」
「お久しぶりです。ミスマル司令」
どうやら2人は面識があるらしい。「これも上からの任務でな、断れなかったたんだよ」
「それにしてもおかしいですね。軍とはもう話がついているはずですが・・・」
アキトたちが話しているとプロスが不思議そうに言ってきた。
その手にはいつの間にか契約書のようなものが握られている。
「軍もナデシコほどの戦艦を手放す余裕はないということだ」
「それでは交渉ですな」
「うむ、それではそちらの代表者一名とテンカワ・アキトはこちらに来てもらおうか」
「俺が?」
アキトが不思議に言う。
「久しぶりに君と話がしてみたくてね」
「それではテンカワさん行きましょう」
「それと、娘のユリカは一体どこに・・・」プロスが、コウイチロウの言葉を半ば無視する形で契約書を手にアキトを引っ張ってすぐに行ってしまった。
ブリッジでは大半のブリッジクルーがその手際のよさに唖然としていた。
ちなみに、コウイチロウの娘であるユリカは、トビウメが出てくる直前にこの事態を予測したアキトの手によって気絶させられている。戦艦トビウメのとある一室にて
プロスとアキトはなぜか一緒についてきたジュンとともにトビウメに来ていた。
アキトはトビウメにつくとすぐに呼ばれてこの部屋に連れてこられたのだった。
「久しぶりだね、アキト君」
「こちらこそ、2年ぶりくらいでしょうか?」
「もうそんなになるのかな。しかし、あれだけ軍に忠実だった君が何故軍を辞めたのか聞かせてくれないかね?」
「俺が軍を辞めたのは軍が火星を放棄したからです」
「しかし、あの状況では・・・」
「わかっています。しかし、あれから1年近く経っているのに軍はいまだに火星を取り戻せていない。
それどころかこのままでは月もやつらに奪われるのも時間の問題という状況まできている」
「・・・・・・」
コウイチロウは何も言い返すことができなかった。アキトの言うことが合っていたからだ。
宇宙軍も必死にがんばってはいるが、最近は相手が送り込んでくる敵の数にじりじりと押せれる一方だった。
「このまま軍にいたのでは火星へ行くことはできない。それどころか地上で俺の力をいい様に利用されるだけだと思ったんです。
俺は戦うためにこの力を手に入れたのではない、守りたいものがあるからこそ力を手に入れたんです」
「火星も守りたいものの一つ、ということか」
それからしばらく沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは交渉を終えて帰ってきたプロスだった。
「交渉は終了しました。ナデシコはネルガルの物であって軍の命令を受ける必要はなし、ということです」
ちょうどそのとき一人の兵士があわてて部屋に入ってきた。
「司令、大変です! 海底に沈んでいたチューリップが活動を開始し始めました!!」
「なんだと?!」
「大変だ、ナデシコにはイツキしかパイロットがいないぞ!
グラビティブラストを撃つにもためる時間が必要だ、誰かが囮をしないと!」
アキトとプロスは急いでナデシコへ戻っていった。
ナデシコブリッジ内
「チューリップ浮上します」
ルリが言うとほぼ同時にチューリップが浮上してきた。
「エステを出してください。グラビティブラストをチャージするまでの囮にします」
「そこで俺、ダイゴウジ・ガイさまの出番ってわけだ!!」
「あなた、誰?」
ブリッジクルー全員が同時に言った。
「情報検索…、ありました。その人はエステバリスパイロットの山田次郎となっています。
今は足を骨折して医務室にいるはずですが…」
データを見ながらルリが報告した。
「だから、ダイゴウジ・ガイだっつーの!」
「ルリちゃん、イツキさんは?」
ユリカがそういうとブリッジとの回線に、割り込む形でイツキが入ってきた。
「ナデシコのエースパイロットはこの俺だということを証明してみせるからブリッジでおとなしく俺の活躍を見てろ!
って言れたので・・・」
「そういうことですか。なら山田機は早く発進してグラビティブラストをチャージするまでの時間を稼いでください」
「了解、ダイゴウジ出るぜ」
山田機が出ると同時にウリバタケから通信が入った。
「だれかあのバカを止めろ! あいつ陸専用のエステで発進しやがった!」
そう、ナデシコのいるところは海の上なのである。
そんなところに空の飛べない陸専用ででると・・・
「山田機チューリップの周りを飛び跳ねています」
「まるでノミね・・・」
「ルリちゃん今のうちにグラビティブラストチャージしてください!」
「もうやっています」
「うおー! 早くしてくれー!!」
かろうじでチューリップの触手の攻撃から逃れながら叫んでいる。
「自分で勝手に陸戦用で出て行ったのに何言ってるんだか・・・」
多少は時間稼ぎにはなっていたが陸戦用のエステではすぐに限界がきた。
「艦長、チャージ終了しました」
「了解。山田機を退避させてください」
「ダイゴウジだっつーの!」
叫びながらもちゃっかり逃げている
「山田機退避完了しました!」
「よーし、グラビティブラスト撃てー!」
ナデシコから放たれたグラビティブラストがチューリップを破壊していった。
「どうやら俺の出番は無かったみたいだな」
ナデシコへ着艦したアキトは格納庫でそうぼやいていた。
「ではナデシコは当初の目的どうり火星へ向けて発進します。」
ナデシコは火星へ向けて再出発をした。
出発後
「そういえば一人足りないような・・・」
「気のせいじゃないですか?」
「あ、そういえばトビウメにジュンを忘れてきた!!」
こんな会話があったとかなかったとか
あとがき
えー、過去の自分の作品を改定することほどツライことはないなと実感した雄飛です。
それが、書いた日からあまり間がなければいいのですが、生憎とこの作品は2年と半年以上前の作品なので、感想をどんどん送ってください、全然来ないので・・・。