Kanon 舞SS 〜優しさに包まれたなら〜
幾千もの星々が辺りを明るく染め上げる。
東京などの都会とは違う澄み切った空気が、その光景をより美しいものへと変えていた。
そこには静寂が漂っており、ロマンチックというのはこういう光景のことを言うのだろうか。
幾億もの人々が、何回も見てきたこの光景は今でもその輝きを失うことなく人々の心に刻み込まれてゆく。
「…祐一?」
故に少女の呟きは隣の青年の心に、一言一言が全て刻みこまれ、少女もまた同様だ。
「舞?」
2人とも目線は空に向けたまま名を呼び合う。
本来ならもう1人いるべきこの場には、今は2人しかいない。気を利かせてくれたのだろう。
とあるマンションのベランダに2人はいた。
「…ずっと謝らないといけないと思ってたことがある…」
青年は空気を察して、黙って続きの言葉を待った。
それだけ少女は真剣なのだ。
「…ずっと昔のこと。まだ私たちがあの麦畑で遊んでいたころのこと…」
不意に目を閉じて回想する。祐一もそれに倣った。
目を閉じたそこには、あの幼き日の2人が、元気よく麦畑で遊んでいた日々の記憶が、
つい昨日のように鮮明に思い出させる。
「…もう戻れないあの頃、忘れたくない、忘れられない記憶…」
「ああ、あの頃の俺たちがいたから今の俺たちがある」
色々あり、様々な経験をしてきた2人。
しかし、あの頃の経験を誰にも否定することはできないし、本人たちも否定するわけにはいかない。
そっと2人の頬を風が撫でた。
「…謝りたいのはあの頃のこと。家に帰る祐一を信じることの出来なかった弱い私…」
「舞……」
一度互いの言葉が止む。
そしてゆっくりと息を落ち着ける。
「…祐一は帰ってきてくれた、それなのに都合の悪いことは全て忘れたフリをして逃げてしまった…」
ようやく彼の方へと向きかえると、一筋の涙を零しながら互いに向き合う。
「…ごめんなさい」
深々と頭を下げる。
もっと早く謝りたかったこと。けど、決心がつかなかったこと…。
あの日の自分から逃げていた、そんな日々にさよならを告げるために、あえて今この場に立った。
(…嫌われるかもしれない)
そんな思いが頭をよぎる。既に心は泣きそうだった。
剣を持っていたときには知らなかった、弱い自分。本当の姿。
変えてくれたのは、紛れも無く目の前にいる青年、相沢祐一。
更に零れ落ちる涙を止めることは出来ず、頭を下げながら静かに涙する。
そんな彼女を、彼の温かさが包み込んだ。
「あのさ、舞。こんな話知ってるか?」
大切な少女を、力強く、けど、温かく。何処へもやらない、といわんばかりに抱きしめる。
「……?」
さりげなく反対の手で涙をぬぐうと、2人そろって再び星へと目を向ける。
そこには先ほどと変わらない光景が広がっている。
「この星たちの光はさ、何千、何億もの遠い昔のものなんだ。
地球との遠い距離を少しずつ進みながら、ようやくたどり着くんだ」
そこで一息置き、じっと星を見つめる。
「俺と舞も同じことが言えるんじゃないかな?」
「……??」
何が言いたいのかよく分からなかったのか、頭にハテナマークを浮かべながら彼をじっと見る。
彼も、そんな彼女の姿に苦笑した後、真剣な顔で話に戻る。
「俺と舞の間にはまだこの星と地球ほど心が離れているかもしれない。
実際俺は今の舞の思いを理解できていなかったわけだし…。
けど、それは絶望するべきことじゃない。埋められない穴じゃない」
両手で再度彼女をしっかりと抱きとめる。
「肝心なのはどう埋めてゆくか、どう近寄っていくか、じゃないのか?
この星たちのように、遠い距離なのかもしれない。けど、少しずつでも歩み寄ることは出来るから・・・。
互いのことを思いやってさえいれば、心はいつか届くから…。ゆっくり、少しずつお互いを知って行こう?」
「…ぐしゅぐしゅ。祐一…」
子供のように泣きじゃくる舞。
それをやさしく抱きとめる祐一。
間にあるのは確かな絆。あの日交わした、唯一無二の誓い。
包み込むは温かな気持ち。確かに一緒に今を生きているという事実。
時に回り道をしても、寄り道をしても、きっと2人はここにたどり着くのだろう。
互いが辿りつくべき、帰るべき場所へと…。
(いらぬ心配だったようですね…)
今まで見守っていたもう一人の少女もそっとその姿を部屋の奥へと消した。
二人の姿を、星たちだけがいつまでも見守っていた…。
あとがき
雄「はい、自身初の舞メインSSをお送りいたしました〜」
達「どうもー、ここのHPの自称舞部長達太郎でーす」
達「いやー、お初でしたか」
雄「FoKなんかには出てたけど、メインとは程遠かったしねぇ・・・」
達「いやいや、第2章から舞がメインだろ?」
雄「あれ、そうだっけ?」
達「頼むから突っ込んでくれw」
雄「あ、突っ込むべきところだったのか(笑 」
達「筆者が知らないでどうするよ」
雄「……まあそれは置いといて(オイ」
雄「このSS、実は執筆時間1時間未満という・・・」
達「もう少し時間をかけてあげてくれ、舞のために」
雄「結構ノリノリで書いたから、短いながらもそれなりに納得のゆくものができたと思うけど」
達「なら良いか」
雄「舞マスターからして、この作品の品評なんかをお願いします」
達「あら、自称舞部長なのに、舞マスターなってるよ」
雄「舞を極めし者…。通称舞マスター(コラ 」
達「おー、俺は極めし者なのか」
雄「ある意味そうかもね(笑 」
達「まーこれは本編終了後のお話ですかね」
雄「佐祐理さんも交えて3人で同居してる、というありふれた設定」
達「個人的には、二人が卒業後の夏休みって感じかな」
雄「季節はとくには考えてなかったなぁ」
達「いや、これは夏に違いな!」
雄「まあそう言うのならそうかもしれんな」
達「深い意味は無い、筆者が考えていないのだから」
雄「夏か冬の方が星は綺麗かもな」
達「夏祭りから帰った後、花火も終わり星を見ているって感じだ」
雄「始まりからしてしんみりしてるしな」
達「舞はもちろん浴衣姿なのだよ」
雄「おお〜、通ですな」
達「勝手に裏設定を作りましたが、OKっぽいっすw」
雄「言いたくても言えなかった、誤りたくても謝れなかった。そういう舞の葛藤も見出してくれるとありがたい」
達「祐一は気付いてなかったのだから良いのだよ」
雄「様子がおかしいな、くらいは気づいてたかもしれんが、何で悩んでたかは分からなかった感じでヨロシク」
達「俺が言いたいのは、始めて会ったとき舞があのときの女の子だと気が付かなかったといいたいわけさ」
雄「ああ〜、そっちの気づくか。それは確かにそうだな」
達「舞は気付いたのに」
雄「そうだったっけ?」
達「あれ、気付いてるとい設定じゃないの?」
達「祐一は帰ってきてくれた、それなのに都合の悪いことは全て忘れたフリをして、とあるが」
雄「ん〜、微妙なところだが。今振り返ると、自分はそうだったんじゃないか…という舞の回想とも」
達「ん?」
雄「つまり、学校で再開したときに、気づいていたけど、本能的に、というかそういうので忘れたフリをしていたのではないか、と」
雄「舞はそう考えている、ともとれるかなと」
達「まぁ、気付いたには気付いたんじゃない?」
雄「そのほうが分かりやすいか」
達「しかし心なしか本編より長い後書きになってる気がするなw」
雄「まあ気にせず品評の続きをば(笑 」
達「それで良いのか、管理人よ!」
雄「舞が許してくれる(マテコラ 」
達「よしなら俺も許す!!」
雄「では続きを」
達「祐一君と舞の心が星と地球ほど離れていると」
雄「まあたとえ話だけどな」
達「離れすぎじゃない、なんて思ったが」
達「それだけ長い間、一緒に穴を埋めようという祐一君の例えなきもするな」
達「10年間待たせた分、その分さえも共に埋めようと」
達「うわなんか臭い事言ってるな自分w」
雄「さすが舞マスター」
達「ついでに言うと、このSSではさゆりさんだと明言されて無いんだよな」
達「もう一人の少女は」
雄「まあ読んでくれてる人なら分かってくれるかなぁなんて・・・」
雄「さゆりんを出張らせすぎると作品壊れるもので…」
達「まぁな」
達「正直台詞も無いんだと思ってた」
雄「最後の一言くらいならいい感じに映えるかなと思って言わせてみた」
達「心なしかさゆりんの台詞っぽく無い気もするが」
達「さゆりんは分からないので気にしない事にしよう」
雄「主役は舞と祐一だからな」
達「いや、舞だ」
雄「まあ祐一と舞の深い絆でも感じ取ってもらえると幸いですが」
達「ってかいい加減終わらんとまずいベ?」
雄「長くなったので率直に聞くけど、点数でいうとどのくらいよ?」
達「点数聞くのか」
雄「大雑把にでも」
達「67で」
雄「むぅ、まだまだ精進が必要か・・・」
達「ちなみに適当なんでヨロシク」
達「適当なのに半端なのは適当に付けたように見えないようにするための罠です」
雄「…まあ突っ込まないでおいてあげよう」
雄「ではまあ点数も聞いたし、そろそろ締めましょうか」
達「よし終わりますか」
達「せっかくだから締めは任してあげよう、マスターよ」
雄「80点台を目標にたま書くかもしれないのでそのときはヨロシク〜」
雄「それでは長いあとがきにお付き合いいただき、真にありがとうございました」