Kanonクリスマス記念SS

二人のX'mas

 

 

 

「相沢が倒れた、すぐに○○病院まで来てくれ」

その知らせは余りにも突然で、私の心を揺さぶるには十分すぎる出来事だった。
それからどのくらいたったのか、

気がつけば私は『相沢祐一』と書かれた病室の前まで来ていた。

どうやってここまできたのか、など思い出せなかったが今はどうでもよかった。

ただ彼の顔が見たかった。

時計を見るともうすでに夜の7時になっていなかった。

彼と約束した時間が6時だったのでそれから1時間近くたったことになる。

本当は朝からずっと一緒にいたかったのだが、

「すまん、どうしても外せない用事が夕方まであるんだ」

と言われ、せっかくのクリスマスデートは6時からとなってしまった。

さすがの私もすこし頭にきたので断ってやろうかとも思った、

しかし彼の心のそこから謝っている顔を見るとどうしても言えなくなった。

これが惚れた弱み、というやつなのだろうか?

そんな理由で夜のデートとなったわけだけれど

私の親も彼の居候先の主、秋子さんもそこまで頭の固い人ではなく、

「せっかくのクリスマスなのだから」

と夜の外出をOKしてくれた。

夜のデートということもあり、昼間からずっと家で服を選んだりなどしていた私は、

今日こそは彼に問い詰めてやろうと思っていた。

というのも彼がデートを断ったり時間を遅らせたりしたのはこれが始めてではないからだ。

付き合い始めた当初はそうでもなかった。というよりどちらかと言えば彼の方が待ち合わせより先に来ているようなタイプだった。

おかしくなったのは今月、12月に入ってからだった。

急にデートを断るようになったり、学校が終わると一人ですぐに帰るようになったり、

態度が急におかしくなったり・・・。

何度か問い詰めたこともあったが、いつもいつの間にかはぐらかされていた。

そんな決意を元にデートの待ち合わせ先へ向かったのは5時過ぎ。

待ち合わせ場所へついた時はまだ5時半にもなっていなかった。
早く来すぎた、と思いながら彼を待つこと30分。彼はまだ来ない。

それから10分、20分、30分と過ぎ、何かあったのではと心配になり始めた時だった。

その電話が彼の親友でもあり、私の友人でもある北川君からかかったのは。

頭が真っ白になりながらも、

「命に別状はない、本人の意識もしっかりしてる」

ということを聞いていた私は一度深呼吸をした後病室へ入った。
「祐一っ!」

どうしても感情を抑えられずベットに座っていた彼に飛びついた私にさすがの彼もびっくりしたみたいだった。

「急に倒れたって聞いたから心配して・・・」

「あ、その・・・。ごめん。心配かけて悪かった・・・」

目に涙を浮かべながらうったえる私に彼は完全に動揺していた。

もっと言ってやりたかったが、その欲求をなんとか押さえつけ、

倒れた事の真相を彼に問い詰めた。

 

 

彼の話をまとめるとどうやらこういうことらしい。

前から北川君や自分で見つけたバイトを連日連夜で寝る間も惜しんでやり、

その上に普段の学校生活、勉強などをしていた結果、

体の疲労がピークに達し、それでも休まずその生活を続けた結果、バイト先で倒れた、と。

幸いそのバイト先が北川君と同じところらしく、そのおかげで私はいち早く知らせを受けることになった。もちろん秋子さんたちはまだ来ていなかった。

「どうして、そんなに倒れるまで続けるのよ、私心配したんだから・・・!」

「ごめん、でもどうしてもこれをプレゼントしたくて・・・」

そういって取り出したのは小さな一つの箱だった。

彼に了承を得て開けるとそこには私の欲しがっていた指輪が入っていた。
「ほら、前デートしたときそれ欲しがってただろ? でも俺の金じゃあどうしても足りなくてさ・・・」

店長にバイト代前借して昨日中に買っておいてよかった、といつもの笑顔で言った。

(そんな顔したら怒れないじゃない・・・)

「バカ・・・。本当にバカなんだから・・・・・・・」

泣きながら再度抱きついた私を彼を優しく包み込んでくれた。

「そうだ、まだ言ってなかったな」

はてなマークを頭に浮かべながら涙の溜まった瞳で見つめ返す私に彼はそっとこう言った。

「メリークリスマス、香里」

「メリークリスマス、祐一」

今までで一番の笑顔でそう言い返した。

窓の外では白い雪がしんしんと降り続いていた・・・。

 

クリスマス記念SS END

 

どうも、久々に作品を書いた雄飛です。

前にふと思いついたこのSS、ヒロインを誰にするか迷った結果香里になりました。

彼女、Kanonキャラの中では一番好きなもんで・・・。

でも、この作品も本来書く予定はなかったんです。

しかし、さすがの我が家も今日はクリスマスっぽかったことと、サイトをほおっておいたお詫びに書こう、と本日思い立って製作にいたったわけです。

ちなみに製作時間は1時間かからなかったり(笑

自分の心の中は寂しかったりするんですけどね・・・。

では本日はこのへんで・・・。
メリークリスマス!